栄養素(えいようそ)とは、生物が代謝する目的で外界から吸収する物質のことである。栄養素は生体内で代謝され、生体内物質の原料やエネルギー産生に利用される
[参照文献:『岩波生物学事典』][参照文献:『世界大百科辞典』][長倉三郎ら編、「栄養」、『岩波理化学辞典』、第5版CD-ROM版、岩波書店、1999年]。
従属栄養生物は一般には餌を摂食することで栄養素の需要を満たす。栄養素の摂取方式は多岐に渡る。すなわち、
動物や
原生生物は体内に供えられた
消化器官を利用するのに対して、植物は根の外で分解された栄養素を吸収する。どのような物質が栄養素となるかは
遺伝的に決定されるそれぞれの生物固有の代謝経路等に依存する為に生物種によって異なる。また、
栄養学等では上記の栄養素の他に健康を維持するための食事由来の成分を含めて広義の栄養素としている
[正式には食事摂取基準の「策定栄養素」と呼ばれる。; [外部リンク] 日本人の食事摂取基準について、日本国 厚生労働省、2005。また記事 栄養素 (栄養学)に詳しい。]。
動物が食餌を捕食することはごくありふれた行動であるが、
ルイ・パスツールが
アルコール発酵で証明したようにしたように、
ウイルス等少数の例を別にするならば、生物が成長・繁殖細する為の物質は体外から取り込む必要があるし、生命活動を維持する為のエネルギーも生態系からの取り込みに依存している。この様な生物の外界に依存する仕組みが
栄養の本質である。しかし、酸素の有無以外にも
熱水噴出孔のような
極限環境を含めて生物はあらゆる環境下にも生息しており、栄養素として取り込んだ物質を代謝して細胞や組織を構築する方法やエネルギー産生の方法もいろいろな方式が存在する。言い換えると生物が環境に適応する方法の一つとして取り込む物質を変化させるので、栄養素とされる物質も千差万別であり
有機化合物であったり
無機化合物であったりもする。分類的には有機化合物である栄養素は有機栄養素とよばれ、無機化合物である栄養素は無機栄養素ないしは栄養塩類とも呼ばれる。有機栄養素(ゆうきえいようそ、Organic nutrient)と呼ばれるものには、
炭水化物、
脂肪、
たんぱく質(もしくは構成要素の
アミノ酸)、
ビタミンなどがある。また、
ミネラルのような一部の無機化合物も栄養素である。
栄養素が必要とされるのは、その物質が生体内の需要を生合成で賄うことができず、外部からの取り込みに頼ることが理由となる。需要量の点から栄養素を分類すると需要量の多い
主要栄養素(しゅよう えいようそ、macronutrient)とそれとは相対的に少量の摂取で済む
微量栄養素(びりょうえいようそ、micronutrient)とからなる。すなわち栄養素としてとりこまれる物質の比率は生物種によって異なるだけでなく、生物の置かれた環境や個体の成長段階によっても変化する。しかし、細胞を構築するための物質やエネルギー産生の為の物質はその必要量も多く、
主要栄養素(しゅよう えいようそ、macronutrient)と呼ばれる。その一方、調節機構にかかわる物質は存在自体が少量な為、栄養素としての取り込み量も少量である。そのような栄養素は
微量栄養素(びりょうえいようそ、micronutrient)と呼ばれる。すなわち、生物の構成要素として
たんぱく質、
核酸、
糖類は生物種によらず普遍的に利用されているので、それらの構成元素である
炭素、
水素、
窒素、
酸素、
リンそして
硫黄は主要栄養素を構成する元素である。また細胞内外に存在しさまざまな働きをする
カルシウム、
食塩(
ナトリウムと
塩素)、
マグネシウム、
カリウムなどの
電解質も主要栄養素を構成する元素に含められる場合がある。微量栄養素で注意すべきは、単に生物体から検出されたからといって微量栄養素なのか単なる汚染なのかは識別することはできず、成長に必要な因子であるかどうかが明確になる必要がある
[検出感度が飛躍的に向上したため、今日では周期表のほとんどの微量元素を生体試料から検出することが可能になっている。一部のサプリメントには体内で検出されることをもって栄養素であると主張する根拠に欠ける商品もある。]。
栄養素は取り込まれる際に能動的あるいは受動的に
細胞膜を通過して輸送される。しかしその化合物の種類は選択されたものだけである。分子量の小さい有機栄養素やは水溶性が高い無機栄養素は受動輸送される場合がほとんどであるが、
ブドウ糖以上の分子量を持つ有機栄養素の多くは選択的に能動輸送される。多くの場合、
動物や
原生生物などの従属栄養生物は
消化酵素などを
分泌することで、生体外や
消化管で食餌をこの様な摂取可能な物質に分解してから栄養素として取り込んでいる(記事
消化に詳しい)。